残価設定ローンで購入した場合の経理処理
法人契約で残価設定ローンを組んで車を購入した場合、経理処理はどのようになるのか?
残価設定ローンというのは、あらかじめ3年後や5年後の車の残存価値を計算してその分を車の価格から差し引いてローンを組むというやり方です。
支払が終わっても残価の部分は自分(会社)のものにはなりません。ではその残価部分は減価償却の対象にはならないのでしょうか?
また、ローン終了後に新しい車に買い替える場合や返却する場合、また買い取る場合は経理上どのような処理になるのかを考えてみましょう。
まず、大前提となるのは残価設定ローンというのは、3年後や5年後に「あらかじめ設定した金額で車を買い戻します」という約束(特約)をして契約するローンです。
あくまでも買い戻す金額を約束しているだけであって、車の一部だけを買ったワケではないのです。
別な言い方をすると、例えば5年間60回払いの残価設定ローンの場合、61回目の支払額が残価分ということになるのです。もちろん60回までは月額数万円ですが61回目は高額になります。
61回目の支払については「支払って車を買い取る」こともできますし「支払わずに車を返却あるいは別な車に乗り換える」という方法を選択することができるのです。
具体的な例で考えてみましょう。
(ただし、租税公課や利息、手数料、リサイクル料の処理は省きます)
3月決算の会社が1,000万円のベンツを5年後の残価設定額200万円、頭金ナシで購入した場合です。納車は期首の4月1日とします。
まず購入時の仕訳は...
貸方)車両運搬具 10,000,000 / 借方)未 払 金 8,000,000
長期未払金 2,000,000
...と、残価部分も含めて購入額全部を資産計上します。
ローン支払中は毎月未払金部分を減らしていきます。
貸方)未払金 ○○○ / 借方)現金・預金 ○○○
最終の60回目の支払終了で未払金は0円になり、長期未払金として計上した残価部分の200万円が帳簿に残っています。
では、5年のローン終了後に車を買い取った場合はどういう処理になるでしょう。
貸方)長期未払金 2,000,000 / 借方)現金・預金 2,000,000
これで車の所有者は会社となります。
さて、5年後に車を返却した場合はどうなるでしょう?
まず1000万円で購入した車は6年かけて減価償却していきますのでその期末帳簿残高は下記のように推移していきます。
1年目の決算後 5,830,000円
2年目の決算後 3,398,890円
3年目の決算後 1,981,553円
4年目の決算後 1,155,246円
5年目の決算後 577,623円
6年目の決算後 1円
5年後の3月31日に車を返却するとした場合、その時点での帳簿上の価値は577,623円なのです。
しかし、残価設定額は200万円です。つまり60万円に満たない価値の車を200万円で引き取ってくれるということになるので、会社にとっては利益となってしまうのです。
経理上の処理は下記の通りです。
貸方)長期未払金 2,000,000 / 借方)車両運搬具 577,623
固定資産売却益 1,422,377
節税目的で車を購入したはずが、5年後に車を返却するという選択をした場合経理上は利益が150万円近く出てしまうのです。
残価設定ローンは、3年後や5年後に据え置く価格が高ければ高いほどローン部分の価格が下がるので月々の支払額を低く抑えることができます。
しかし、残価額が高いほど帳簿上の価格との差額が大きくなり車を返却する場合には利益が出てしまうということになってしまいます。
残価設定ローンを利用する場合は、月々の支払額だけではなく3年後5年後のこともよく考えた上で利用することが大切ですネ。