車輌の償却は定率法?定額法?どっちがお得?
車や機械設備などの固定資産を購入した場合、購入額がそのまま損金とはならず、経理上は固定資産に計上されて決算時に減価償却をしていきます。
減価償却には「定額法」と「定率法」という2つの方法があります。
法人の場合は届出をしなければ自動的に「定率法」となりますが償却方法は任意で選択することが可能ですので「定額法」を選ぶことも可能です。(ただし建物や無形固定資産は定額法です。)
まずはそれぞれがどういう償却方法なのかを見てみましょう。
≪定額法≫
文字通り「一定の額」を償却していく方法です。
定額法は償却額が毎年均等になるように費用配分する方法で、価値が均等に目減りするという考え方だから、単純で分かりやすいです。ただし、計算では「÷耐用年数」とはしません。
例えば、耐用年数が5年なら1/5=0.2で良いけれど、6年なら 1/6=0.16666...となり割り切れなので実際は耐用年数ごとに税法で決めた定額法の償却率を使います。
具体的な計算式は 【減価償却費=取得価額×償却率】 となります
また年度の途中に購入したり、廃棄した場合や月次決算のために、12で割った月割り計算を使います。
例えば1,000万円のベンツを新車で購入した場合、定額法での償却額は6年間で下記のようになります。
10,000,000円(取得価格)×1.67(償却率)=1,670,000円
1年目の償却額:1,670,000円
2年目の償却額:1,670,000円
3年目の償却額:1,670,000円
4年目の償却額:1,670,000円
5年目の償却額:1,670,000円
6年目の償却額:1,649,999円
6年間の償却後の帳簿残高は1円となります。
≪定率法≫
定率法は減価償却費が毎年一定の"割合"で減るという方式です。
具体的な計算式は
【減価償却費=未償却残高(取得価額-償却累計額)×償却率】 となります。
2007年に改定された新しい定率法の式を使うと耐用年数が近づいても残存簿価が1円にはなりません。そこで償却費がある値(償却保証額)を下回るようになると、それ以後は定額法に切り替えて計算する仕組みがとられています。
急激にガクンガクンと下がっていきますが、最後の方は横ばい的に一定額で下がるという方式となります。
例えば1,000万円のベンツを新車で購入した場合、定率法での償却額は6年間で下記のようになります。
1年目の償却額 4,170,000円
2年目の償却額 2,431,110円
3年目の償却額 1,417,337円
4年目の償却額 826,307円
5年目の償却額 577,623円
6年目の償却額 577,622円
6年間の償却後の帳簿残高は1円となります。
定額法でも、定率法でも耐用年数の期間償却した帳簿残高は1円となりますが、途中での償却額には大きな差があります。上記の償却額を比較すれば一目瞭然ですが、定率法の方が償却(費用化)のスピードが猛烈に速いのがわかると思います。
売り上げが順調に伸びていれば、早め早めに経費処理した方が利益を抑えて節税になり、投資額の資金回収を早めることができます。
それは将来に大きな費用リスクを残さない、と言う財務の健全性の立場にもかなうやり方なので、一般には定率法を採用する会社が多いのです。
一方の定額法は、初期の費用負担を抑えられるので、利益を早く出したいような創業期やそれを重視する経営者に向いています。
ただし、償却方法は個別の資産毎で変えることはできません。去年購入した営業車のミライースは定額法なのに、今年購入した社長のベンツは定率法という風にはできないということです。
固定資産には「車両運搬具」「工具器具備品」「建物附属設備」などといった分類があり、その分類毎に償却方法が決まります。「車両運搬具」を定率法とした場合は、全ての車輌が定率法になります。
また、定率法⇒定額法 あるいは定額法⇒定率法への変更は税務署に届出をすれば可能ですが、毎年コロコロと方法を変更することはできません。最低でも3年間は同じ方法をとらなければ変更は認めてくれませんのでご注意ください。